マレーシア政府観光局 海外教育旅行を成功させるための提案

ケーススタディ <盈進高等学校の場合>

広島県の盈進高等学校は今年8月、2年生の生徒271名が参加し、3泊5日の国際理解フィールドワークでマレーシアを訪れた。同校のプログラムは、興味に応じて選べる多彩なコース設定が特徴。生徒達はマレーシアの自然と文化に触れながら、クラスの枠や国も越えて交友が広がったようだ。
同校のきめ細かい講座設定の理由やその方法などについて、藤本教諭にお話を伺った。

国際理解フィールドワーク日程表
タイムテーブル表

数多い候補地の中から、マレーシアを選ばれたのはなぜですか?

アジアの国や人々と友好関係を育みたいということ、また、アジアの中の日本という視点に立つことで、国際社会での日本の役割についても考えられることから、アジアの国を選びました。

マレーシアはイスラム教、ヒンドゥー教、仏教、それ以外の宗教の人もいるという多民族国家です。その人達は文化や生活習慣も異なりますが、その違いを受け入れ、民族間で特に争うこともなく生活しています。そのようなマレーシアでは、さまざまな異文化交流ができる上、国際的な視野を養うこともできます。また、治安が良く、人々がとてもフレンドリーで、自然が多いということからもマレーシアに決めました。


 
今年で7回目となる国際理解フィールドワークはすべてマレーシアで実施されたのでしょうか?
全員で訪れたのは2回ですが、マレーシアを訪れる講座は毎回設けています。ジョホールバルで活動する講座(ベースはシンガポール)、ホームステイ講座(タイ・グアム・シンガポール・マレーシアからの選択)、ボルネオ島でオランウータン見学をする講座などです。

   
バリエーション豊富な講座の内容は、どのように決定されているのですか?

 本校で進めている教育改革、『平和・ひと・環境』の柱に沿うよう決めていきました。
まず、『平和』をカルチャーコース、『ひと』をBBS・幼稚園訪問コース、『環境』をネイチャーコースとし、ホームステイコースを加えた全4コースを設定しました。さらに、それぞれのコースごとにテーマをより明確にした11講座を準備しました。
生徒にはこの11講座の中から興味に応じたものを選択させ、希望者の少ない講座は開講せず、逆に人数の多い講座は20名程度の班に分け、14のグループ(ゼミ)を作りました。

クラスの枠を超えた仲間との交流や、異文化に触れ、何気ない瞬間を鋭く観察する感性を養うことで、新しい自分を再発見してほしいと考え、講座の設定を行いました。

 
   
同フィールドワークを始められた理由を教えてください。また、これだけ講座数が多いと先生方のご負担も大きいと思われますが、いかがでしょうか。

 国際理解フィールドワークは、「コミュニケーションスキルの向上」を目的に始めました。
現代の大きな課題の一つに、人間関係作りが困難な児童・生徒・青年の増大があります。人間は社会的な動物であり、社会の中で自己を相対化し、アイデンティティを構築します。したがって、人間関係作りが困難な場合、現実の社会で生きていくことが困難になると思います。そのため国際理解フィールドワークは、現実の社会でより良く生きる力を付けることが目標です。

教員の負担は、該当学年の教員一人ひとりが少人数のゼミを担当することで軽減しています。生徒の評価も高く、実施後は友人関係も確実に広がり、積極的に行動できる生徒が増えています。画一的に与えられたプログラムではなく、自らが選び主体的に関わる中で、生徒は大きく成長していきます。これらのことから国際理解フィールドワークを継続しています。

 
   
参加生徒数から判断すると、A講座とK講座の人気が高かったようですね。
最も人気が高かったのは、全身でマレーシアの自然を感じ満喫したA講座です。ホームステイを行ったK講座は1泊だけだったため、「短い、もう少しいたかった」という声が多く聞かれました。
また、K講座の「バンフリス村での体験講座」で行ったアグロツアーでは、村内にあるゴム園、油ヤシ農園、コーヒー農園の見学。採取方法や精製法を教わったほか、ゴム園では樹皮を削る体験もしました。いずれも私たちの身の回りにあるものの原料ですが、日本では自然にある姿を見たことのないものばかりで、生徒たちは新鮮な驚きと感動を覚えたようです。
 
◆A講座
○ 「今日は朝から海へ行った。海へ行くのが今回のフィールドワークで一番楽しみにしていたことなので、期待で胸をふくらませた。海はあまりきれいではない…と先輩から聞いていたけれど、サピ島の海はきれいだった。水も冷たくなかったので入りやすく、遠浅で沖の方まで行けて、楽しむことができた。また、パンを持って海にはいると、一瞬で魚が寄ってきたので、捕まえようとしたが、さすがにそれは無理だった。RM(リンギッド)70でフライフィッシュというマリンスポーツも体験した。バナナボートよりスリルがあって、とてもおもしろかった。」

○「川の水がきれいだった。世界一小さな花もあった。木がとても多くて日本にはないような物も多くあった。ラフレシアを直接見ることは出来なかったが模型を見た。たくさんの植物を見れたし、日本とは違う自然を体験することが出来てよかった。」

◆K講座
○「ホームステイをした。英語がなかなか伝わらなくてすごく苦労したけど、ジェスチャーで伝わった。人は言葉の違う国でも一緒に暮らせるんだなぁとすごく感じた。そして子どもは本当に素直。国の違いとか全く気にせずに遊びに来てくれるし、これが本当の世界のあるべき姿だと思う。ガイドさんが、『戦争や争いは、宗教をお互いに理解していないから起こる。マレーシアはお互いを理解しているのだ。』と言うのを聞いて、その通りだと思った。確かに文化は全く違って戸惑ったりしたけれど、一生のうちで本当に貴重な体験をしたと思った。」
 
   
8月30日に実施された現地校との交流ではどのようなことをされたのですか?
校門から驚くほどの大歓迎を受けました。幸運にもマレーシア建国50周年を翌日に控えていたため、祝賀行事のための演目を見せていただくことができました。マレー舞踊にシラットの技の披露、低いうなり声と太鼓を組み合わせた音楽などのステージ発表と、素晴らしいものばかりでした。  
 
   
事前学習や帰国後のフォローアップ(事後学習)は、実施されましたか?
事前学習はロングホームルームを使って4回ほど各講座の内容の確認とコースの検討を行い、全体では、マレーシアの習慣や海外旅行の一般的な注意事項を説明しました。
帰国後は一人ひとりに1600字以内の小論文形式でまとめさせました。実施要綱(しおり)にも小論文を意識したまとめ方を盛り込み、状況や疑問に思ったこと、考えたことをその都度書かせるようにしました。講座活動は学年通信にまとめ、各自1分間スピーチとして約2週間に渡って発表しました。また、本校の学園祭でも講座ごとにパネル展示を行いました。
 
今回のマレーシア修学旅行の総合評価や、生徒たちの評判はいかがでしたか?

 総合評価としては、とても良かったと思います。「満足・やや満足」と答えた生徒の割合は、80%を超えました。
学習効果は期待以上のものがあったのではないかと感じています。生徒達は、町の片隅の何気ない光景にも目を留め、そこから日本との違いを考えたり、自分の生活を見つめ直したりしたようです。「豊かさとは何かを考えさせられた。」という生徒もいました。「目に見えるもの」から「目に見えないもの」について考える姿勢を身に付けることができたと思います。

これからもマレーシアへの国際理解学習の旅を継続する予定です。ただ、今回は多くのことを体験させたいという思いから、短時間にアクティビティが盛りだくさんとなり、行程に追われてしまった感がありました。内容が多すぎると移動が多くなる上、それぞれの内容も深まりにくくなってしまいます。一つのプログラムをじっくり体験させた方が生徒へのインパクトも強くると思います。今後は反省を活かしながら、さらに充実したフィールドワークにしていきたと考えています。

 

――どうもありがとうございました。



*詳細はマレーシア政府観光局のホームページをご覧下さい。
www.tourismmalaysia.or.jp