9月号特集 クチンの町をそぞろ歩く 【街】イントロダクション:クチンという町
クチンはマレーシアの中でも独特の歴史と景観を持った町です。イバン族、オラン・ウルといった少数民族、中国人、英国人……クチンの町の成り立ちが雰囲気のある町を作り出しています。
東マレーシア最大の都市

サラワク州の州都クチン。意外と思われる人も多いかもしれませんが、日本から直行便も就航しているサバ州のコタキナバルよりも大きな町です。人口は約58万人(ちなみにコタキナバルは約54万人)、太平洋戦争のために市街のほとんどが瓦礫と化したコタキナバルに比べ、クチンは被害が少なかったため、ノスタルジックな町並みが今もところどころに残っています。

昔ながらの商店が軒を連ねる
チャイナタウン

歴史が作り出した文化のモザイクのような町

クチンという町を歩く前に、まず簡単にこの町の成り立ちをひも解いていきましょう。
周知のように、マレーシアは、マレー系・中国系・インド系のおもに3つの民族によって構成されています。しかし、クチンのあるサラワク州は少し様子が異なっています。ここにはイバン族、ビダユ族、オラン・ウルといった多くの先住民族が暮らしていました。また古くから海上貿易の拠点として栄え、たくさんの中国人が入植していました。19世紀にはイギリス人の探検家ジェームス・ブルックが王(ラジャ)に任ぜられ、アジアに白人の王による国が成立し、第2次世界大戦中には日本に統治されるという時代もありました。クチンは一筋縄にはいかない歴史を持つ町なのです。その歴史が町並みにも現れています。中国系のショップハウスが続いているかと思えば、その隣にはヨーロッパ風の白亜の建築が並ぶ。金色のたまねぎをたずさえたモスクがあるかと思えば、極彩色の中国寺院や、緑の芝生が敷き詰められたキリスト教会もある。町行く女性のスカーフ率がとても低いことも、半島部マレーシアの町とは違った印象を与えるかもしれません。
今回はこのクチンの町をゆっくりと歩いてみようと思います。
※半島部マレーシアの民族構成は、マレー系約60%、中国系約28%、インド系約9%、少数民族約1%となっているのに対し、サラワク州ではマレー系約22%、中国系約26%、少数民族約49%(イバン族約29%、ビダユ族約8%、ムナラウ族約6%ほか)。

エキゾチックなモスク

サラワク州はキリスト教徒が多い